安定器交換とは?ビルメン初心者が苦戦する業務といわれる理由とは?

電工2種

ビルメンテナンスの世界では、様々な技術と知識が求められますが、特に「安定器交換」は初心者にとって一筋縄ではいかない作業として知られています。

この記事では、安定器交換がビルメンテナンスの中でなぜ難易度が高いとされるのか、その理由を詳しく解説します。安定器とは、主に蛍光灯やHIDランプなどの放電灯に使用される重要な部品であり、その交換作業はビルの照明システムの効率と安全性を保つために不可欠です。しかし、この作業には電気知識だけでなく、安全対策や適切なツールの使用など、多岐にわたるスキルが求められるのです。

安定器交換とは

安定器の役割

安定器とは、電流を安定させ、灯具の適切な点灯を支える重要な機能を持っています。具体的には、電流の急激な増加を防ぎ、灯具の寿命を延ばし、エネルギー効率を高める役割を果たしています。

安定器は、ビルの照明システムにおいて中心的な役割を果たします。主に蛍光灯やHIDランプなどの放電灯に使用されることが多いです。

ビルメン業務ではどの現場でも行う仕事といっても過言ではありません。

安定器の寿命

安定器の耐用年数は約10年と言われています。ちなみに照明器具本体も10-15年ぐらいが寿命とされています。

頻繁に交換が起こるものではないが故、いざ起こると困ってしまうものでもあります。

交換の必要性

安定器は長期間使用すると劣化するため、定期的な交換が必要です。劣化した安定器を放置すると、照明のちらつきや消灯、さらには過熱による火災のリスクも高まります。したがって、安定器の交換はビルの安全性と快適性を維持するために欠かせない作業なのです。

交換作業の注意点

安定器にはいくつかの種類がありますが、特に注意が必要なのが「PCB安定器」です。PCBとは「ポリ塩化ビフェニル」という化学物質のことで、1957年から1972年の間に製造された安定器に使われていました。

このPCBは、人の健康に害を及ぼす可能性がある有害物質です。そのため、PCBを含む安定器は、政府が定めた期限内に適切に処理・廃棄することが法律で義務付けられています。これは、環境保護と人々の健康を守るための重要な措置です。

詳しくは環境省のページをご覧ください。
環境省:PCBとは?なぜ処分が必要か?

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ビルメン初心者が苦戦する理由

安定器は劣化することにより、異常振動、異音、異臭、発熱、点灯不良、漏電などが発生するため、日々の点検の中で確認するポイントになります。

蛍光灯器具がない施設はほとんどないため、どの会社や現場でも必ず行う業務といえます。

一方、ビルメン未経験者はせいぜい交換したことがあるのは、家の照明くらいなもので、蛍光灯器具の交換や安定器ごと買える経験をしたことがある人はまずいないでしょう。

手順を理解し、慣れれば難しいことはないですが、未経験者がやったことがない業務で一定頻度発生するため、初心者が苦戦するといわれているようです。

電工がなくてもできる業務。そのため初心者にも任されやすい

蛍光灯器具内に設置されている安定器の交換は、器具の改修・修理作業にあたるため、安定器交換は 電気工事に該当せず、電気工事士の資格は必要ありません

ただし、新しく取付ける安定器についてそのメーカーが製造物責任を負うため、作業者はメーカーが指定する作業基準と作業手順を確実に守る必要があります。


これらに従わず事故が発生した場合は、作業者の責任が問われる可能性があるので、必ず取扱説明書に記載された内容と手順を確認し、作業を行ってください。初めて業務を行うときは、先輩と一緒に行うことをおすすめします。

安定器交換の具体的な手順

安定器交換の手順

  1. 準備作業
    • 必要な工具(日圧CE2相当の接続端子用工具、YS-1614相当の工具、ワイヤーストリッパー、4×12タッピングネジ等)を準備します。
    • 安全のため、作業を始める前に電源を切り、確認してください。
  2. ハーネスの結線作業
    • 安定器のコネクタを接続する前に、ハーネスの結線作業を行います。このステップは非常に重要です。
    • 電線被覆をワイヤーストリッパーで適切に剥きます。圧着工具が不要なワゴ端子(LC1)も使用可能です。
  3. 配線図の確認と結線
    • 安定器に表記されている配線図を確認します。
    • 器具側の配線を短めに切断し、新しいハーネスと結線します。結線接続時の注意事項を確認してください。
  4. 結線作業のチェック
    • 結線作業が終了したら、誤配線や接触不良がないかを確実にチェックします。
  5. 安定器の取り付け
    • 安定器を磁石で取り付けます。取付面に電線止め等が残っている場合は、吸着が弱くなるので完全に取り除いてください。
    • 平坦部が確保できない、または磁石の吸着が弱い場合は、必ず2箇所でネジ止めを行います(4×12タッピングネジ使用)。
  6. ハーネスのコネクタ接続
    • 結線が済んだハーネスのコネクタを、ランプ側(8P)と電源側(3P)に順に差し込みます。
  7. 点灯確認
    • ランプを装着し、電源を投入して点灯を確認します。ランプが点灯しない場合は、不点灯時のガイダンスを参照してください。
  8. 銘板シールの貼付け
    • 付属の器具銘板シールを反射板の表面に必ず貼付けます。

要注意事項

  • 取付作業終了後、必ずメガリングを行なって 絶縁抵抗が10MΩ以上である事を確認して下さい。これを怠りますと、漏電による火災発生の恐れがあります。
  • 安定器本体には 絶対に穴を開けないで下さい。内部へバリ等の侵入によって火災発生の恐れがあります。ネジ止めする場合は、必ず取付穴を使用して下さい。

まとめ

安定器交換は、ビルメンテナンスにおいて重要な業務の一つです。安定器は電流を安定させ、灯具の寿命を延ばし、エネルギー効率を高める役割を担っています。その寿命は約10年とされ、定期的な交換が必要です。

特に注意すべきは、有害物質PCBを含む古い安定器の適切な処理です。交換作業は、適切な工具の準備、電源の確認、ハーネスの結線、配線図の確認、結線作業のチェック、安定器の取り付け、ハーネスのコネクタ接続、点灯確認、銘板シールの貼付けといった一連の手順を要します。

ビルメン初心者にとっては挑戦的な作業かもしれませんが、手順を正確に守ることで、ビルの安全性と快適性を維持することができます。

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