近年、AI技術の進化とその社会への浸透は目を見張るものがあります。多くの業界でAIの導入が進められ、効率化や自動化が実現されています。この波は建設業界にも押し寄せ、施工管理の現場でもAIの活用が進められています。そこで生まれる疑問が、「AIの進化によって、施工管理の仕事はなくなってしまうのか?」というものです。
施工管理は、建設プロジェクトの品質、コスト、納期を管理する重要な役割を担っています。その業務内容は複雑であり、多岐にわたる知識と経験が求められます。AIがこれらの業務を完全に置き換えることができるのか、それとも施工管理者とAIが協働する形になるのか。この記事では、施工管理の将来性とAIの役割について深掘りしていきます。
建設業界の現状
建設業界の市場規模
建設業界は市場規模55兆円の巨大市場で、日本のGDPの10%に相当します。
建設業の市場規模は昔から比べてると大幅な減少トレンドとなっています。人口減少や産業の空洞化に伴う新築工事の減少が主な要因といわれています。
平成22年ごろから、オリンピックや万博の需要に伴い、市場規模が伸びているものの、近年資材の高騰などの影響を受けて、やや縮小傾向にあるようです。
有効求人倍率
建設業界の有効求人倍率は、令和3年3月時点で、6.77倍と非常に高いです。
同月の日本全体の有効求人倍率が1.10倍ですので、ほかの業種に比べて6倍人手不足が発生しているといえます。
転職市場においては、完全な売り手市場だといえます。
働いている人の年齢分布
建設業界は高齢化が他産業以上に進んでいます。
55歳以上が全体の3割、29歳以下が1割と他業種に比べても高齢者が多く若者が少ない産業です。
10年後には、従事者の3割が引退してしまうため、2035年以降は、深刻な人手不足に陥るといわれています。
引用:不動産・建設経済局_最近の建設業を巡る状況について【報告】
平均年収
厚生労働省のデータによると、施工管理の2022年の全国の平均年収は620万円です。(厚生労働省)
全国の平均年収が443万円なので、平均年収より若干低いといえます。
地域、年齢、資格別の年収は下の記事に詳しく記載していますので、気になる方はぜひご覧ください。
施工管理の平均年収はいくら?セコカンの年齢別の平均年収をチェック
施工管理の将来性
施工管理とは
施工管理とは、建築や土木のプロジェクトが計画通りに、安全かつ効率的に進行するように監督・管理する業務のことを指します。具体的には、設計図の内容が正確に現場で再現されるようにするだけでなく、工程の進捗、品質、コスト、安全管理などの面での最適化を図る役割があります。
業務の詳細は下の記事に詳しく記載しましたので、ぜひご覧ください。
市場規模の予測
2023年時点の日本の建設業界は、高齢化社会の影響や都市部の再開発、インフラの老朽化対策などにより、一定の需要が維持されています。しかし、今後20年間での市場規模は、以下の要因により緩やかな減少を見込むことが考えられます。
- 高齢化と人口減少: 日本の人口は減少傾向にあり、特に地方では急速な高齢化が進んでいます。これにより、新しい住宅や施設の需要が都市部を中心に集中し、地方では建設需要が減少する可能性が高い。
- 技術の進化: AIやロボット技術の進化により、建設現場の効率化や自動化が進むことが予想されます。これにより、同じ規模のプロジェクトでも必要な人手や時間が減少し、市場全体の規模が縮小する可能性がある。
- 持続可能な都市開発: 環境問題への対応として、持続可能な都市開発やエコ建築の需要が増加することが予想されます。これに伴い、既存の建物のリノベーションや再利用が進むことで、新規の建設需要が減少する可能性がある。
- インフラの老朽化: 一方で、日本の多くのインフラは高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が進んでいます。これに対する更新や補修の需要は増加することが予想されます。
総じて、日本の建設業界の市場規模は、人口動態や技術の進化、環境問題への対応など複数の要因により、今後20年間で緩やかな減少を見込むことが考えられます。しかし、インフラの更新や補修の需要により、一定の市場規模は維持されると予想されます。
平均年収の予測
建設業界は、近年の経済動向や社会的背景を考慮すると、従事者の年収が今後、継続的に上昇するとの見解が多くの専門家や調査機関から示されています。この予想の背後には、いくつかの要因が存在しますが、特に注目されるのは「高齢化による人手不足」の問題です。
現在、建設業界における従事者の中で、多くが高齢者であり、これらの経験豊富な職人や技術者たちが次々と引退の時期を迎えることとなります。このような状況は、業界全体において深刻な人手不足を引き起こすと予測されています。
具体的には、2030年を目途に、3万人から5万人の労働力が不足するとの試算がなされています。このような人手不足は、特に施工管理などの専門的な技術を持つ技術者たちにおいて、給与の上昇をもたらす可能性が高いです。
施工管理でのAIの活用のされ方
画像認識AIによる写真管理の効率化(竹中工務店)
竹中工務店は、建設業界の長時間労働問題を解決するため、ITとAI技術の活用を進めています。特に、建設現場での写真撮影とその後の報告書作成は、大量の工程を経るため、現場監督にとっての大きな負担となっていました。竹中工務店は、この問題を解決するために、画像認識AIを導入し、撮影された写真を自動で工程ごとに分類するシステムを開発。このシステムは、2018年6月からの大規模プロジェクトで実際に導入され、1人当たり毎日約2時間の効率化が期待されています。現在、19種類の工事写真を自動分類できるこのシステムは、今後300~400種類の工事を認識できるようにブラッシュアップが続けられる予定です。
自動化施工システムによる現場の工場化(鹿島建設)
鹿島建設は、秋田県の成瀬ダム堤体打設工事で自動化施工システム「A4CSEL®」を活用しています。このシステムを用いて、CSG(Cemented Sand and Gravel)の製造から打設までの全作業を完全自動化し、現場の工場化を実現しました。具体的には、自動ブルドーザ、自動振動ローラ、自動ダンプトラックなどの建設機械14台が稼働しており、これらの機械は約400km離れた鹿島西湘実験フィールドから遠隔管制されています。2021年には「遠隔集中管制システム」を開発し、鹿島本社ビルと複数の現場を結び、実証実験を成功させました。この技術の導入により、効率的かつ安全な施工が可能となり、建設業界の人手不足や生産性向上の課題にも対応しています。
現場に行かないリモート施工管理の実現(清水建設)
清水建設は、AIとIoTを活用した施工管理効率化システム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発しました。このシステムは、3D LiDAR、AI、GNSS(位置情報システム)を組み合わせて、ダンプトラックの運転席に設置して使用します。3D LiDARでダンプトラックの土砂の有無を点群データで取得し、AIで土砂の荷降ろし状態を識別。GNSSで位置情報を取得し、AWSでデータを統合・分析します。このシステムにより、運土の進捗率や運土量をリアルタイムで視覚化し、遠隔地からの工事進捗管理が可能となり、業務の効率化や省人化が期待されます。2022年には、愛知県の工事現場での試験適用により、システムの有効性を確認しています。
施工管理で今後市場価値が上がる人の特徴
資格保有者
団塊世代のリタイアに伴い、1級保有者も多く引退してしまいます。そのため、1級の施工管理技士を持っている人の市場価値は今後ますます上がっていくことと思われます。
懸念としては、受験要件の緩和など資格取得の難易度が下がることによる資格保有者の増加があります。しかし、現在建設業界は若者に人気の職種とは言いにくく、急激に資格保有者が増えることは考えにくいです。
ITを駆使して仕事ができる人
今後、現場にはたくさんのIT製品が効率化の目的で導入されるでしょう。それらを駆使して仕事ができるかどうかは、今以上に重要になります。
まずは最低限ITに対してアレルギーがないことですが、ITツールを自分で使いこなせるだけでなく、現場に浸透させることができれば、施工管理としての市場価値を大幅に上げることが可能になります。
余談ですが、施工管理経験があり、IT知識がある人は、建設現場に導入されるシステムを作っている会社への転職も容易です。土日祝休み、リモート可、残業45時間以内など建設業よりも良い条件のことがほとんどです。
川上~川下まで経験がある人
IT化による業務効率化が進むと、工事にかかわる人が少なくなることが予想されます。その結果、施工管理が1人で見る領域が広くなるケースも増えます。
特定の業務に特化した人(例えば安全管理だけできる人)の需要はIT化により減少する一方、施工管理やその周辺領域の業務もできる人の需要はさらに高まることが予想されます。
まとめ
近年、AI技術の進化により、多くの業界で自動化や効率化が進められています。建設業界も例外ではなく、施工管理の分野でもAIの導入が進む中、その将来性についての議論が活発になっています。一部の専門家は、AIによる自動化が進むことで施工管理の仕事が減少するとの見解を示しています。確かに、データ分析や進捗管理などの一部のタスクはAIによって効率的に行われるようになるでしょう。
しかし、施工管理には人間の判断や経験、コミュニケーション能力が不可欠であり、これらの要素を完全にAIに置き換えることは難しいと考えられます。むしろ、AIは施工管理者の補助ツールとして、より高品質で迅速な施工をサポートする役割を果たすでしょう。
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また、そのほかにも企業からネットには上げないでくれと念押しされている情報や、採用過去在籍者の口コミなどを知ることができるからです。(私もここにかけない情報がいっぱいあります笑)
転職エージェントからみて、おすすめの施工管理のエージェントをまとめた記事があるので参考にしてみてください。
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